コラム
公開日:2023/08/21
更新日:2023/10/25

タワマン節税は税制改正で見直し!相続税評価額はどうなる

「タワマン節税」として知られる効果的な相続税対策について、国税庁はかねてからタワーマンションを利用した過度な節税に対して注意を払ってきました。

そして、ついに2023年度の与党税制改正大綱において、「相続税法の時価主義の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する」との表現が盛り込まれ、タワマン節税を抑制するための方針が明示されました。

これにより、市場評価との適切な整合性を保つための対策が講じられる見通しです。

改正は2024年1月1日以降の適用が目指されており、近々マンションの相続税評価が大きく変わる見込みとなっています。

本記事では、タワマン節税がどう変わるのか、節税が防止されるのか、なぜ見直しされるのかについて分かりやすく解説します。

1.タワーマンションが相続税節税になる理由

まずは、なぜ「タワマン節税」が行われているのか、タワマン節税の基本的な仕組みについて解説します。

1-1.相続のために、現金を不動産に変えるべきか

相続税は相続財産の金額をベースに計算されます。

例えば、現金や預金は相続発生時点での残高がそのまま相続税評価額となるため、預金1億円の相続税評価額は1億円になるのです。

一方、不動産の相続税評価は「時価」のように考えられることがありますが、実際にはそうではなく、時価の約7割程度の計算基準が採用されています。

市場価値では1億円ある不動産でも、相続税の計算においては7000万円の価値として取り扱われるのです。

簡潔に言うと、現金を不動産に換えておくだけで、相続税対策になるというわけです。

では、なぜタワーマンションなのでしょうか。

1-2.高階層と低階層の相続税評価

そもそも、建物の相続税評価額は「固定資産税評価額」を使用します。

固定資産税評価額は階数にかかわらず建物専有面積に応じているため、低層階と高層階でも広さが同じ部屋であれば相続税評価額は同じになるのです。

そして、一般的に、タワーマンションは高層階ほど市場価値が高くなる傾向があります。

ただし、相続税の計算においてはその要素は無視されるため、最上階の部屋であっても、低層階の部屋と同じ評価額とされるという利点があります。

1-3.敷地の細分化による節税効果

マンションの土地部分の相続税評価額は、土地の面積を各部屋の専有面積に応じて応分されます。

そのため、戸数が多いほど1戸当たりの相続税評価額は小さくなります。

つまり、戸数が多くなりやすいタワーマンションは、通常のマンションよりもさらに敷地が細分化されるため節税効果が増大するのです。

また、建物部分と同様に、タワーマンションの高層階ほど市場価値が高くなることについては相続税評価額に反映されません。

1-4.まとめ

上述の通り、不動産の中でも特にタワーマンションが相続税対策になる理由は2つでした。

まず、不動産の相続税評価計算の仕組み上、土地部分の相続税評価額が各部屋の専有面積に応じて応分されるため1戸当たりの金額が小さくなりやすいことです。

2つ目は、高層階は低層階よりも市場価値が高いにもかかわらず相続税評価額には反映されていないことから、市場価格と相続税評価額が大きく乖離することになり、高く売れる不動産を持っているにもかかわらず、相続税は低く計算されることです。

さらに、マンションを賃貸にすることや、小規模宅地等の特例を適用することで、相続税評価額を一層抑えることが可能です。ただでさえ低い相続税評価額の上に、他の節税対策を乗せることができるのですね。

2.マンションの相続税評価の見直しはタワーマンションに限らない

なお、この改正はタワーマンションに限ったものではありません。タワーマンションが受ける影響が大きいというだけで、改正自体はマンションにも影響する点に注意しましょう。なぜ見直しが行われているのかも確認しましょう。

2-1. なぜ見直し?国がマンションの相続税評価を見直す背景

これまで国は、節税が行き過ぎた悪質なケースに対しては、財産評価基本通達6項「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」に基づき個別に対応してきました。

代表例として、2022年4月19日に出た最高裁判決を紹介しましょう。この判決は国税庁が改正を進めた理由の1つであるといわれています。

この事案では、時価約13億円のマンションを相続税評価額は約3億3000万円として申告したことに対して税務署が否認し、マンションの相続税評価額を約12億7000万円として約3億円の追徴課税を求めました。

相続人はこれを不服として訴えを起こしましたが、最高裁は税務署の主張を認める形で判決を下した流れです。

2-2.令和5年度の税制改正大綱におけるマンションの相続税評価見直し

また、国税庁の資料によると、マンションの市場価格と相続税評価額の乖離率は平均2.34倍となっており、マンションの約65%は「相続税評価額が市場価格の半額以下」で評価されています。

1億円の価値があるマンションにもかかわらず、相続税評価額は5000万円として相続税が計算されているのです。

一方、一戸建ての乖離率は平均1.66倍で、市場価格の6割程度で評価されています。

国はタワマン節税を狙うちして封じ込めたいのではなく、課税の公平の観点からマンションすべての相続税評価を一戸建ての乖離率レベルまで見直そうとしているのです。

3.マンションの相続税評価の方向性

マンションの相続税評価が具体的にどのように見直されるのかについては、まだ検討中の段階です。最後に改正の方向性を確認しておきましょう。

国税庁は2023年1月に有識者会議を立ち上げ、マンションの相続税評価方法を検討しています。

具体的な内容についてはまだ明かされていませんが、マンションの相続税評価計算の過程において、現状の算式に評価額をアップさせる項目を追加するものと思われます。

市場価格と相続税評価額が乖離する要因となっている、築年数、総階数、所在階などの指数に基づいて、相続税評価額が市場価格の最低6割となるように補正することを検討しています。

4.改正によるマンション市場の変化

マンションの相続税評価が見直されると、現在より相続税対策としての魅力がなくなるでしょう。

つまり、節税目的でマンションを購入する人が減る可能性が高いと言えます。

特に、タワーマンションについては、もはや憧れの住まいというよりも富裕層を対象にした金融商品と化しており、節税目的や投資物件としての需要が大きくなっています。

そして、その節税目的が薄れてしまう以上、需要の下がりが激しいことが予想されます。

5. まとめ

今回、タワマン節税は、税制改正で見直しされる点、なぜ節税防止されるのか、また相続税評価額などについて解説致しました。

相続税と贈与税などについては、法律の専門家にご相談ください。

当事務所でも、税理士・弁護士・社労士・司法書士・不動産鑑定士・FP等と連携し、一つの窓口で相続に関する全てをサポートさせて頂いております。お気軽にご相談ください。