コラム
公開日:2024/07/02
更新日:2024/07/02

相続登記義務化|過去の相続は?登記しないとどうなる?簡素化等解説

相続財産に不動産が含まれている場合、不動産の名義変更が必要になります。これを「相続登記」といいます。

これまでは任意だった相続登記が2024年4月1日(令和6年4月1日)から義務化されます。

それにより、期限までに相続登記をしないとペナルティが科されるおそれがあります。そのため、過去の相続についても義務化の対象になりますので、早めに対応する必要があるでしょう。

今回は、2024年からスタートした相続登記の義務化はいつからか、過去の相続はどうなるのか、相続の登記をしないとどうなるのか、簡素化などについてわかりやすく解説します。

1.  相続登記の義務化をわかりやすく解説

1-1. 相続登記の義務化はいつから

多くの方が気になる「相続登記の義務化はいつからか」という問いに対する答えは、2024年4月1日です。

この日を境に、これまで任意だった相続登記が法的な義務となります。

本稿では、相続登記とは何か、そしてなぜこの時期に義務化されることになったのか、その背景や理由について詳しく説明していきます。

1-2.相続登記とは

相続登記とは、被相続人名義の不動産を相続人名義に変更する手続きです。相続財産に土地や建物といった不動産が含まれている場合には、相続登記を行う必要があります。

これまでは、相続登記は任意とされていましたので、不動産を相続したとしても相続登記をせずに放置しているというケースも少なくありませんでした。

しかし、上記でも申しました通り、2024年4月1日から相続登記義務化が始まりますので、今後は不動産を相続したときは必ず相続登記を行わなければなりません。

1-3.相続登記と相続放棄

なお、相続登記は、相続人に対して課される義務ですので、相続放棄をした相続人については相続登記が不要です。なぜなら、相続放棄をすれば、その相続について初めから相続人とならなかったものとみなされるからです。

1-4.相続登記の義務は過去の相続に遡及する

相続登記の義務化は、2024年4月1日からスタートしますが、同日以降に発生した相続だけでなく、それ以前に発生した相続も対象になる点、つまり過去の相続に遡及する点に注意が必要です。

過去に不動産を相続したものの相続登記が未了になっている方も相続登記の義務化の対象になります。

法定の期限までに相続登記の申請をしなければ、後述する「罰則」が適用されますので、早めに手続きを進めるようにしましょう。

1-5.相続登記が義務化された背景

相続登記が義務化されたのは、「所有者不明土地」の増加が深刻な社会問題になっていたからです。

所有者不明土地とは、登記簿を見ても所有者がわからない土地をいいます。所有者不明土地は、土地の管理がされないまま放置され、周辺環境や治安の悪化を招くことで、周辺住民に不安を与えてしまいます。

また、土砂崩れなどの防災対策工事ができず、公共事業や市街地開発も困難になるため、土地の有効活用の妨げになるなどの問題点が指摘されていました。

このような問題を解決するために相続登記が義務化されたのです。

2. 相続登記をしないとどうなる?

相続登記の義務化により、いつまでに相続登記を行う必要があるのでしょうか。また、相続登記をしないとどのようなペナルティがあるのでしょうか。

2-1. 相続登記の期限

相続登記の義務化に伴い、相続登記には期限が設けられました。

具体的には、相続による不動産の取得を知った日から3年が期限です。

また、それとは別に遺産分割が成立した場合、成立日から3年が期限です。

2-2. 改正法の施行日前の相続登記を放置している場合の期限

改正法の施行日前の不動産の相続についても、相続登記の期限が設けられています。この場合の期限は、以下のいずれか遅い日となっています。

  • 2024年4月1日から3年以内(2027年3月31日)
  • 不動産の所有権の取得を知った日から3年以内

改正法の施行日前に発生した相続で、相続登記を放置している事案のほとんどは、2027年3月31日が相続登記の期限になりますので、早めの対応が必要です。

2-3. 期限内に登記が完了しなければ10万円以下の過料

正当な理由なく定められた期限内に登記を行わないとどうなるかというと、法律に基づいて「10万円以下の過料」が科されることになります。

ただし、過料は、行政上のペナルティの一種ですので、刑罰とは異なり前科になることはありません。

なお、期限までに相続登記ができない正当な理由としては、以下の理由が挙げられます。

  • 相続人の数がきわめて多く、戸籍関係書類などの収集や相続人の把握に時間を要する場合
  • 遺産の範囲や遺言の有効性が争われているため、不動産の帰属主体が明らかでない場合
  • 相続登記の申請義務者に重病などの事情がある場合
  • 相続登記の申請義務者がDV被害者で、避難を余儀なくされている場合
  • 相続登記の申請義務者が経済的に困窮しており、相続登記の費用を負担する能力がない場合

3. 相続登記の簡素化について

相続登記義務化により期限内に相続登記をしなければ、10万円以下の過料が科されるおそれがあります。

期限までに相続登記の申請ができないという場合には、新たに設けられた「相続人申告登記」の制度を利用するとよいでしょう。

3-1. 相続人申告登記は申請の簡素化のための制度

相続人申告登記とは、相続登記の申請を簡素化する目的で新設された制度で、相続登記の義務化と同様に2024年4月1日からスタートします。

相続人申告登記を行えば、相続登記の義務を履行したものとみなされますので、期限内に相続登記の申請ができなかったとしても罰則が適用されることはありません。

そのため、相続人同士で争いがあり期限までに遺産分割協議がまとまりそうにないという場合には、相続人申告登記を利用して申請を簡素化するとよいでしょう。

3-2. 相続人申告登記の方法

相続人申告登記は、法務局において、必要な戸籍謄本などを添付して以下の2点を申し出ることで行うことができます。

  • 所有権の登記名義人について相続が開始したこと
  • 自分がその相続人であること

なお、相続登記は、登録免許税という費用がかかりますが、相続人申告登記は無料で行うことができます。

3-3. 遺産分割がまとまったときは相続登記が必要

相続人申告登記により、相続登記の義務を履行したことになりますが、あくまでも期限内に相続登記ができない場合の暫定的な措置になります。

そのため、遺産分割がまとまった場合には、相続人申告登記をしていたとしても相続登記が必要になります。

この場合には、遺産分割成立日から3年以内の相続登記が必要です。

4. まとめ

今回は、2024年4月1日から相続登記の相続登記の義務化はいつからか、過去の相続はどうなるのか、相続の登記をしないとどうなるのか、簡素化などについてわかりやすく解説致しました。

今後、発生する相続だけでなく、過去に発生した相続も対象になりますので、相続登記未了のまま放置しているという方は、早めに手続きを行う必要があります。

期限内に相続登記をしないと過料が科されますので、一人で対応するのが不安な方は専門家に相談してみましょう。また、相続税と贈与税などについても、法律の専門家にご相談ください。

当事務所でも、税理士・弁護士・社労士・司法書士・不動産鑑定士・FP等と連携し、一つの窓口で相続に関する全てをサポートさせて頂いております。お気軽にご相談ください。