コラム
公開日:2024/08/26
更新日:2024/08/26

相続における司法書士と税理士の役割の違い|どっちを選ぶべき?

家族が亡くなった後の手続きである「相続手続き」は多種多様であり、中には専門的知識が必要になる手続きもあります。

相続手続きを専門家に依頼することを考えている方も多くいらっしゃると思いますが、各士業によって相続における役割が異なるため、手続きによって相談する専門家が異なります。

相続の専門家は、弁護士、税理士、司法書士、行政書士などが代表的です。その中でも、不動産の相続登記の専門家である「司法書士」と相続税の専門家である「税理士」に相続手続きを相談されるケースが多いと思います。

ここでは、司法書士と税理士、どちらに相談したほうがいいのか「相続における司法書士と税理士の役割の違い」「どっちを選ぶべか」について解説します。

1.相続における司法書士と税理士の役割の違い

士業には、その資格取得者しか行うことができない業務が定められています。相続における司法書士と税理士の業務内容についてみてみましょう。

1-1.司法書士の相続における役割

相続における司法書士の主な業務は多岐にわたります。特に、以下は司法書士が専門とする業務です。

  • 「不動産の相続登記に関する手続き」
  • 亡くなった方が会社役員である場合の「役員の死亡による役員変更」
  • 「会社の解散登記」

相続登記は2024年4月1日から義務化されており、不動産を相続した場合には必ず相続登記が必要です。

その他、相続人が誰になるのかを戸籍謄本等で調査する「相続人の調査」、相続人が相続財産を相続する権利や義務を一切受け継がない手続きである「相続放棄」も司法書士の専門分野です。

また、生前から相続に向けて準備を行う「終活」も司法書士の専門です。

「遺言に関する手続き」や「家族信託、成年後見」といった業務を行うことができます。

相続の際に、司法書士ができる役割の範囲はかなり広いため「相続が発生したけど誰に相談していいのかわからない」といった場合には、司法書士に相談することで何をすべきかが明確になることもあります。

ただし「相続税」に関することや「家事事件」(相続による家庭内の紛争)については対応することができません。相続税については税理士、家事事件については弁護士に相談する必要があります。

1-2.税理士の相続における役割

相続における税理士の主な業務は、以下のとおりです。

  • 「相続税申告書を作成すること」
  • 相続税申告に付随する業務に対応しており「相続人の調査」「相続財産調査」
  • 亡くなった人の最後の確定申告である「準確定申告」

などを行うことができます。また、相続税申告書の提出後、税務調査が行われた際の対応も税理士の役割です。

その他、相続人全員で相続財産について話し合う「遺産分割協議」の結果をまとめた「遺産分割協議書」を相続税申告書の添付書類として作成することが可能です。

あくまでも相続税申告書の添付書類としての作成になるため、相続税の申告が不要な場合には遺産分割協議書の作成はできません。

相続人の間で分割協議が揉めている場合についても非弁行為になる可能性があるため、税理士が遺産分割協議書を作成することはできません。

また、生前から相続税に関する対策を行う「生前の相続税対策」も税理士の重要な業務です。

現状を把握し、相続税がどれくらいかかるのかを算出することで効果的な相続税対策の提案を行います。相続税対策の1つの方法として遺言書作成のサポートも行うことができます。

1-3.司法書士と税理士の相続対応業務一覧

司法書士と税理士がそれぞれ対応できる相続業務をまとめると次のとおりです。どっちに相談するか参考にしてください。

相続で対応できる業務内容 司法書士 税理士
相続人の調査
相続放棄 ×
不動産の相続登記 ×
預貯金の解約・払い戻し、有価証券などの名義変更
相続税申告 ×
所得税の準確定申告 ×
役員の死亡による役員変更登記、会社の解散登記 ×
遺言書の作成
相続税の生前対策 ×

 

2.相続を相談する際に準備すべきこと

司法書士と税理士は、相続で対応できる業務内容が異なるため、相談する際には相談の内容に応じて事前に準備すべきものが違います。代表的な相談内容と準備すべきものをみていきましょう。

2-1.司法書士への相談に準備するもの

2-1-1.不動産の相続登記の相談

不動産の相続登記について相談する場合には、次の書類を準備しておくとスムーズに手続きを行うことができます。

  • 固定資産税の課税明細書(納税通知書)又は固定資産評価証明書
  • 死亡の記載のある戸籍(除籍)謄本
  • 亡くなった人の住民票の除票
  • 相続人(相談者)の身分証明書

その他、準備ができるのであれば「不動産の権利書や売買契約書、登記事項証明書」「相続人の戸籍謄本等」「遺言書または遺産分割協議書」「相続する人の住民票」を持参すれば最短で手続きを行うことができるでしょう。

書類が準備できていなくても司法書士から書類の案内が行われますので、まずは相談してみるといいでしょう。

2-1-2.預貯金の解約・払い戻し、有価証券などの名義変更の相談

預貯金の解約・払い戻し、有価証券などの名義変更を相談する場合には次の書類を準備しておきましょう。

  • 亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 遺言書または遺産分割協議書

預貯金の解約・払い戻し、有価証券などの名義変更手続きは、戸籍を取り寄せ、相続関係説明図の作成、遺産分割協議書の作成を行い、相続人全員の印鑑証明とともに金融機関や証券会社に提出することで完了します。戸籍の取得から全て司法書士に依頼することも可能ですが、事前に用意することでスムーズに手続きを進めることができます。

2-2.税理士への相談に準備するもの

2-2-1.相続税申告の相談

相続税申告の相談を行う場合には、次のような書類を事前に準備しておきましょう。

  • 亡くなった人を中心とした相続人の関係図
  • 亡くなった人名義の財産内訳(預貯金、不動産、有価証券、生命保険などをまとめたもの)
  • 固定資産税の課税明細書(納税通知書)又は固定資産評価証明書
  • 遺言書(ある場合は)

※自筆証書遺言の場合は検認手続きが必要になります。

実際に相続税申告を税理士に依頼した場合には、戸籍謄本一式や各財産に関する残高証明などの書類が必要になります。相談時に税理士から申告に必要な書類の案内が行われるでしょう。

なお、相続登記手続きの際に生ずる登録免許税等は固定資産税評価額に基づき算出されます。固定資産税評価額がずはり相続税申告の際の評価額になるわけではありませんので注意が必要です。

3.相続を相談するなら司法書士・税理士どっち?

相続の相談は、必要な手続きによって相談先が異なります。「相続財産に不動産がある場合には司法書士への相談」「相続税がかかりそうな時は税理士への相談」と覚えておけばいいでしょう。

相続財産に不動産があり、相続税申告も必要になる場合には、司法書士と税理士どちらの専門家にも相談が必要になり、手間がかかってしまう場合がありますので「司法書士と連携している税理士」などに相談するとスムーズに相続手続きを行うことが可能です。

司法書士の中にも得手不得手があり、相続手続きの実績が少ない専門家もいます。税理士も同じように相続税申告実績が少ない場合があるため、依頼した場合の費用だけで決めず、無料相談などを利用し複数の専門家に相談してから誰に依頼するかを検討してみるといいでしょう。

4.まとめ

今回は、相続における司法書士と税理士の役割の違い、どっちを選ぶべきかを解説しました。

相続が発生すると多くの手続きが必要になり、手続きによって専門家が異なるため、どんな手続きが必要になるかを把握することが重要です。

しかし、相続を初めて経験する方にとっては自分で必要な手続きを見極めることは非常に難しいことだと思います。

まずは、司法書士または税理士のどちらかに相談することで、必要な手続きを案内してもらえると思いますので「専門家に相談すること」を第一に考えて行動するといいでしょう。

特に、相続税と贈与税などについては、法律の専門家にご相談ください。

当事務所でも、税理士・弁護士・社労士・司法書士・不動産鑑定士・FP等と連携し、一つの窓口で相続に関する全てをサポートさせて頂いております。お気軽にご相談ください。