コラム
公開日:2020/11/27
更新日:2023/02/02
相続した土地の売却に伴う税金はいくら?確定申告は必ず必要?
不動産を相続後、売却する際に、税金や経費が発生することを考える必要があります。
今回は、相続した実家の土地・家を売却した場合に発生する税金と経費についてご紹介します。確定申告が必要か、不要かも確認をしてみましょう。
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目次
1.相続した不動産の売却にかかる税金は何税?
亡くなった父・母名義の土地を売却した際に課税される税金は、「譲渡所得税」と「住民税」、土地の売買契約書に貼り付ける「印紙税」の3つになります。
※なお「譲渡所得税」とは譲渡所得にかかる税金の一般的な総称です。ここでは「譲渡所得にかかる所得税」について譲渡所得税と記載しています。
1-1.譲渡所得税・住民税
土地の売却益(譲渡所得)には、譲渡所得税と住民税が課税されます。
例えば、当初1,500万円で購入した土地を2,000万円で売却すると、儲かった500万円に対して譲渡所得税と住民税が課税されます。
なお、譲渡所得税と住民税の税率は「土地の保有期間」によって大きく異なります。
対象の土地を「5年超保有」した場合(長期譲渡所得)の税率は「20.315%」であるのに対し、「5年未満で売却」した場合(短期譲渡所得)は「39.63%」になり、短期譲渡所得の税率は長期譲渡所得の約2倍になります。
・長期譲渡所得(土地の保有期間が5年超)の税金
長期譲渡所得×(所得税率15.315%(復興特別所得税2.1%を含む)+住民税率5%)・短期譲渡所得(土地の保有期間が5年未満)の税金
短期譲渡所得×(所得税率30.63%(復興特別所得税2.1%を含む)+住民税率9%)
なお、土地の保有期間の算定は、「亡くなった人(被相続人)」の保有期間をも引継ぎます。
つまり、土地を相続した日から5年ではなく、被相続人が土地を取得した日から5年超かどうかで判定を行います。
また、土地の当初の購入費用や仲介手数料などの経費(取得費)についても被相続人から引継ぎます。
1-2.印紙税
相続した土地を売却する際に必要な売買契約書には「印紙」を貼り付ける必要があります。
印紙税の額は、次の契約金額の区分により定められています(令和4年3月31日までの間に作成される軽減措置適用後。契約金額の区分を一部抜粋)
契約金額 | 印紙税の額(軽減税率適用後) |
100万円超え500万円以下 | 1,000円 |
500万円超え1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円超え5,000万円以下 | 10,000円 |
5,000万円超え1億円以下 | 30,000円 |
1億円超え5億円以下 | 60,000円 |
1-3.その他の土地の売却にかかる諸費用
土地の売却を行う際には、次の費用が発生します。
①仲介手数料
土地の売却を依頼した不動産業者に支払う手数料になります。仲介手数料には物件の売買価格によって上限が定められており、売買価格が400万円超の場合は売買価格の3%に6万円と消費税を加算した金額が上限になります。
②登録免許税
売却する土地が住宅ローンの利用などにより金融機関の抵当権が設定されている場合、「抵当権抹消登記」を売主の負担で行います。
抵当権抹消登記にかかる登録免許税は、不動産の数×1,000円になります。登記を司法書士に依頼する場合は、別途司法書士への報酬が発生します。
③土地の確定測量費、建物の解体費用など
境界が確定していない土地を売却する場合には、測量を行ったうえで売却するケースがあります。このようなケースでは土地の「確定測量費」が発生します。
また、土地のうえに建物が建っている場合で、建物を取り壊して土地を売却する場合には「解体費用」が発生します。
2.相続後の土地の売却には様々な特例や控除がある
相続した土地を売却した場合は、通常の譲渡所得で利用できる控除や特例に加えて、次の2つの特例と控除があります。この2つの特例と控除のいずれかを利用することで譲渡所得の金額を少なくし、譲渡所得税と住民税の税額を軽減することができます。
2-1.取得費加算の特例(相続財産を譲渡した場合の取得費の特例)
取得費加算の特例とは、相続税申告時に納付した相続税の一部を譲渡所得の算定時に取得費に加算することができる特例です。
取得費に相続税の一部を加算することにより譲渡所得を軽減することができ、譲渡所得税と住民税の税額を少なくすることができます。
相続時に相続税を納付されている方で、その後に相続した土地を売却する方には特に難しい要件がなく、使い勝手のいい特例です。
ただし「相続開始日の翌日から3年10ヶ月以内に売却していること」が要件になっていますので、売却するタイミングには気を付けましょう。
2-2.相続空き家の3000万円控除(相続等により取得した空き家を譲渡した場合の3,000万円特別控除)
相続空き家の3000万円控除とは、平成28年度税制改正により創設された新しい制度です。相続により取得した空き家を耐震リフォーム後に売却、または空き家を取り壊し更地にして売却した場合に譲渡所得から3,000万円まで控除することができます。
この制度は、空き家を減らすことを目的として創られた制度のため、被相続人が亡くなった時点で1人暮らしである場合に限られます。
また、先にご紹介した取得費加算の特例と併用して適用することができず、選択適用になります。この制度を適用するためには様々な条件や必要書類があるため、専門家に相談されることをおすすめします。
2-3.併用できる控除や特例(自己居住用の土地と建物を売却する場合)
取得費加算の特例と相続空き家の3000万円控除は、どちらも次の住宅関連の控除や特例と併用することが可能です。
①自己居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除(譲渡価額要件:なし)
マイホームを売った場合に、譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例です。相続空き家の3000万円控除と併用する場合は、両方の控除を合計して上限3,000万円までとなります。
②自己居住用財産の買換え等に係る特例措置(譲渡価額要件:1億円以下)
この特例措置には次のような特例があり、これらの特例と併用することができます。
・特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例
・特定の居住用財産を交換した場合の長期譲渡所得の課税の特例
・居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
・特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
3.税金はいくらぐらい発生するのか?具体例でご紹介
実際に土地を売却した場合、どれくらいの税金が発生するのでしょうか?具体例とともにご紹介します。前提条件は、下記のとおりです。
・売却価額1,500万円
・平成元年に取得した土地
・土地の購入価額は500万円
・相続後は空き家
・売却するための家屋の取り壊し費用200万円(譲渡費用)
・売買契約書の印紙税1万円(譲渡費用)
・相続が発生して2年後に売却
3-1.特例や控除を利用しなかった場合
特例や控除を利用しなかった場合、下記のような計算式となります。
1. 売却価額1,500万円-(取得費500万円+譲渡費用201万円)=799万円
2. 799万円×税率15.315%(長期譲渡所得、復興特別所得税を含む)=所得税1,223,600円
3. 799万円×税率5%=住民税399,500円
4. 1,223,600円+399,500円=合計税額1,623,100円
3-2.相続空き家の3000万円控除を利用した場合
相続空き家の3000万円控除を利用した場合は、下記のとおりです。
1. 売却価額1,500万円-(取得費500万円+譲渡費用201万円)=799万円
2. 799万円≦3,000万円のため譲渡所得はゼロ
3. 所得税、住民税の納税額はゼロ
3-3.取得費加算の特例を利用した場合
取得費加算の特例では、相続税申告時に支払った相続税のうち、売却した土地に対応した部分を取得費に加算することができます。ここでの相続税申告は、次の通りに計算します。
なお、一般的には時価の80%が相続税評価額となるため、土地の売却価額1,500万円の80%にあたる1,200万円を土地の相続税評価額としています。
1.相続人が相続した資産2,000万円(売却した土地の相続税評価額1,200万円+その他800万円)・相続人が納税した相続税額200万円とする
2.相続税額200万円×(土地1,200万円÷相続財産総額2,000万円)=120万円
3.売却価額1,500万円-(取得費500万円+取得費加算120万円+譲渡費用201万円)=679万円
4.679万円×税率15.315%(長期譲渡所得、復興特別所得税を含む)=所得税1,039,800円
5.679万円×税率5%=住民税339,500円
6.1,039,800円+339,500円=合計税額1,379,300円
4.土地を売却したら確定申告が必要?不要?
実家など、相続した土地を売却した場合で「売却益が発生する場合」は確定申告が不要でしょうか。必要でしょうか。
また、売却益が発生しない場合でも「相続空き家の3000万円控除」や「取得費加算の特例」を利用するためには、確定申告をする必要があるため注意が必要です。
4-1. 確定申告はいつする?
確定申告は、不要ではなく、相続した土地を売却した年の翌年3月15日までに税務署へ申告書の提出を行わなければなりません。
所得税の確定申告を行うことで、確定申告の情報が市区町村に伝えられ住民税の計算が行われるため、別途住民税の申告は必要ありません。
4-2.必要書類は?
譲渡所得の確定申告では、申告書以外に次の書類が必要になります。
・不動産売却時の売買契約書
・不動産購入時の売買契約書
・仲介手数料、印紙税などの領収書
取得費加算の特例を利用する場合には、上記の書類の他に「相続税の申告書の写し(第1表、第11表、第11の2表、第14表、第15表)」の添付が必要です。
相続空き家の3000万円控除を利用する場合には、上記書類の他に下記書類の添付が必要です。
・登記事項証明書等
・被相続人居住用家屋等確認書(市役所が発行)
・耐震基準適合証明書又は建設住宅性能評価書の写し(耐震基準適合後に売却する場合)
なお、上記の被相続人居住用家屋等確認書は、不動産の所在地がある「市役所」に申請することで発行してもらえます。申請には「被相続人の住民票除票」や「電気、水道、ガスの使用中止日(閉栓日、契約廃止日)が確認できる書類」など多くの書類の提出が必要になります。
5.まとめ:茨城県・つくば・下妻周辺の生前贈与・相続税対策は鯨井会計グループへ
今回は相続後に実家の土地・不動産を売却した場合の税金について、確定申告が必要か不要かどうかについて、ご紹介しました。
亡くなった父名義・母名義の実家の土地などを売却をする際には控除制度が利用でき、場合によっては譲渡所得税と住民税の税額を軽減することが可能です。
ただし「相続空き家の3000万円控除」や他の特例と併用して利用する場合などは適用条件が複雑になりますので、税理士にご相談されることをおすすめします。
なお当事務所「鯨井会計」では、茨城県つくば市を中心として、相続対策の立案・実行支援サービスを実施しております。
相続税に関するセミナーも頻繁に行い、相続税に関するご依頼も数多くお受けしております。
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