コラム
公開日:2021/08/05
更新日:2021/08/05

事業承継は誰に相談すべき?相談先一覧、メリットや注意点などを解説

経営者にとって会社を次の世代に託す「事業承継」は大きな悩みであり課題です。

事業承継と一口に言っても事業承継の方法や会社の状況によって相談する専門家が異なります。事業承継を成功させるために適した専門家を選定することは大変重要です。ここでは「事業承継の悩みを解決してくれる相談先」についてご紹介します。

1.事業承継の6つの相談先|無料相談対応も多い

まずは事業承継の相談先候補として、専門家や機関の特徴について以下でご紹介します。各所、初回相談無料で対応している場合が多いので気軽に事業承継に関するお悩みを相談してみましょう。

1-1.税理士

会社経営と税理士は切っても切れない関係です。

特に顧問税理士がいる場合は、顧問税理士が会社の財務状況や経営状態を把握しているためスムーズな事業承継が行え、事業承継後の新しい経営者へのアドバイスも行うことができます。

そのため、税理士が事業承継の相談を最初に行う相談先として最も適していると言っても過言では有りません。

また、税理士は事業承継において大きな壁となる「税金」についての専門家でもあります。どのように自社株を後継者に移転させると税負担が少なくなるのか等、様々な税金についての疑問を解決してくれます。

1-2.会計士

会計士も税理士同様に会計と財務の専門家であり、事業承継の相談先として有力です。

特に公認会計士は中堅・大規模法人の会計について長けているため、一定規模以上の会社であれば公認会計士に相談するといいでしょう。

公認会計士の中には税理士資格も有している方もいるため、その場合は、事業承継に対する税金のサポートについても相談できるでしょう。

1-3.金融機関

取引先の金融機関でも事業承継の相談に対応している場合があります。中には事業承継に対応するための専門窓口を設置している金融機関もあります。

ただし、金融機関によっては、本来必要のない融資を前提とした事業承継プランを提案してくることもあるため、見極めが必要です。

1-4.商工会議所

各市町村に設置されている商工会議所は、様々な業種の会社をサポートしており、事業承継についての相談も可能です。

定期的に事業承継に関するセミナーなどを行っている商工会議所もありますので参加してみるといいでしょう。各商工会議所には地元の税理士や会計士、弁護士なども所属しているため、事業承継の窓口として相談することもできます。

1-5.弁護士

弁護士に事業承継を相談することは可能ですが、特殊な場合に限られます。例えば、紛争が起きてしまいそうな事業承継であったり、遺言書が必要な事業承継であったりする場合には弁護士に相談する必要があります。

生前に円満に事業承継を行う場合であれば、会計や税法の知識がある税理士や会計士に相談した方がいいでしょう。

1-6.コンサルティング会社

親族や関係者に後継者がおらず、M&Aにより事業を残していこうと考えている場合にはM&Aを専門に取り扱うコンサルティング会社に相談することで、専門的なサポートを受けることができます。

幅広いネットワークからM&Aの相手先を探し、交渉、手続きについてもサポートしてもらえるでしょう。

ただし、M&Aのコンサルティングは成功報酬によりコンサルティング料を支払う場合がほとんどで、会社の規模によっては多額のコンサルティング費用が発生するため注意が必要です。

2.事業承継タイプ別相談窓口

事業承継はケースごとに、最適な方法は異なります。ここでは、事業承継のタイプ別に区分し、最適な専門家は誰になるのかをご紹介します。

2-1.子が事業承継する場合(親族内承継)

子を会社の後継者にする場合は「税理士または会計士」が適した相談窓口と言えます。

会社の全ての株式を親族で保有している同族会社であれば、法的な問題が発生する可能性低いため、弁護士への相談は必要ないケースも多いでしょう。

なお、従業員や第三者が後継者になる場合よりも、社内・社外からの理解を得やすいでというメリットはありますが「株式の移転方法」や「時期」についてはしっかり検討する必要があります。

株式を子などの後継者へ移転する際には「無償で贈与するのか」「売却するのか」によって課税される税金が異なります。

また、取引価格のない非上場株式の株価の計算は、会社の業績や配当の有無、財産の時価、類似した企業の業績などによって算出されます。

そのため、会社の株価を引き下げる「株価対策」が必要になります。株価対策には、役員退職金や記念配当、特別配当などの方法があり、これらに精通する専門家は税理士と会計士です。

また、移転時期についても会社の業績が一時的に悪化した際に一度に贈与するのか、または毎年少しずつ贈与していくのかなど、「戦略的な株式の移転計画」をたてる必要があります。

税理士と会計士は、非上場株式の株価を計算することができ、戦略的な株式の移転計画を行える専門家です。子へ事業承継を行う場合(親族内承継)の相談窓口は税理士または会計士がベストではないでしょうか。

2-2.従業員が事業承継する場合(MBO)

従業員に事業継承する場合に、「税理士」が適した相談窓口でしょう。

後継者候補の従業員がいくら優秀でも、会社の事業内容を十分に理解していたとしても、経営者と同じ視点で物事を考えるまでには至っていないケースがしばしば見受けられます。

この場合、以前から会社の財務状況や経営状態を知っている顧問税理士が事業継承する従業員をサポートすることができるため、事業承継後のことを考えると税理士が最も適していると言えるでしょう。

また、会社に金融機関からの借入金がある場合は、保証人の変更手続きなどが必要になるため、金融機関にも事前に相談するといいでしょう。

2-3.第三者が事業承継する場合(M&A)

第三者へ株式を売却し第三者が事業承継するM&Aを検討している場合は、M&Aに特化したコンサルティング会社が適した相談窓口になります。

M&Aには法務や税務、労務など専門知識が必要になります。M&Aに特化したコンサルティング会社は、豊富なM&A経験によるノウハウを蓄積しているため強い味方になってくれるでしょう。

また、M&Aコンサルティング会社では弁護士や税理士、会計士、社会保険労務士などの専門家が在籍している場合が多く、各専門家がそれぞれの分野を担当するため手続きがスムーズに進みます。

なお当事務所「鯨井会計」では、茨城県つくば市を中心として、相続対策の立案・実行支援サービスを実施しております。

事業承継についても、ぜひ当事務所にご依頼ください。

■参考ページ

事業承継支援

3.事業承継補助金・事業承継税制は経営革新等支援機関に相談

事業承継は会社が存続していくために欠かせないものですが、事業を再構築する費用や専門家へ支払うコンサルティング費用、株式の移転にかかる税金など多額の資金が必要になります。

そこで、スムーズな事業承継が実現するよう、国が事業承継補助金や事業承継税制を設けています。

3-1.事業承継補助金

事業承継補助金(正式名称:事業承継・引継ぎ補助金)とは、事業承継やM&Aを契機に経営革新等に挑戦する費用やM&A支援業者に支払う手数料、デューデリジェンスにかかる専門家費用を補助する制度です。

3-2.事業承継税制

株式を後継者に移転する際に発生する贈与税や相続税の税負担を軽減し、事業承継をスムーズに行えるようにする制度です。

3-3.経営革新等支援機関について

事業承継補助金や事業承継税制の利用を検討する際は、相談先が「経営革新等支援機関」の認定を受けているかどうかを確認しましょう。

このような、事業承継を後押しする「事業承継補助金」や「事業承継税制」を適用するためには、承継計画を策定して経営革新等支援機関からの承認を得る必要があるからです。

商工会議所や金融機関、各士業などが国の認定を受けることで経営革新等支援機関に認定されます。

4.事業承継に必要な資金調達の相談先

事業承継には多額の資金が必要になります。事業承継にかかる資金を賄うために資金調達を迫られるケースも少なくありません。事業承継に資金調達が必要になった際には次の機関に相談してみましょう。

4-1.県の商工労働部など|中小企業庁

中小企業庁では事業承継が円滑に行えるように事業承継資金の融資・保証制度を設けています。

この制度を利用するためには、各県に設置されている商工労働部や産業労働部(県によって名称は異なります)から「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(経営承継円滑化法)に基づく認定を受ける必要があります。詳しい内容については中小企業庁のサイトをご覧ください。

中小企業庁

https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_enkatsu/kinyushien_pamphlet.pdf

4-2.日本政策金融公庫

日本政策金融公庫では「事業承継・集約・活性化支援資金」を融資しています。

この資金はM&Aの資金や株式の取得資金に利用でき、民間の金融機関の金利よりも低く設定されています。詳しい内容については日本政策金融公庫のサイトをご覧ください。

日本政策金融公庫

https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/jigyoukeisyou_t.html

5.まとめ

今回は「事業承継の相談先」についてご紹介しました。

次の世代に事業を繋いでいく事業承継はとても重要な課題であり、慎重に行わなければならない課題でもあります。事業承継に関わる専門家は多くいますが、各専門家にはそれぞれ得意分野があります。自社の事業承継にはどの専門家が適しているか考えてみてはいかがでしょうか。

なお当事務所「鯨井会計」では、茨城県つくば市を中心として、相続対策の立案・実行支援サービスや事業承継のサポートを実施しております。

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