コラム
公開日:2023/03/01
更新日:2023/03/01

相続税の2割加算とは|孫養子や代襲相続の場合など分かりやすく解説

亡くなった人と遺産を受け取った人との関係性により相続税が2割上乗せされる「相続税の2割加算」というルールがあります。

2割加算に該当すると、ただでさえ高額になりやすい相続税に、さらに2割加算されることになりますので納税者にとって大変大きな負担です。

もし、納税額が高額で相続税を払うことができなければ延滞税などのペナルティが課されることもあります。ここでは、相続税の2割加算の対象は誰か、孫養子はどうなるか、代襲相続の場合はどうなるか、死亡保険金や生命保険、相続時精算課税制度との関係はどうなのか、また2割加算の計算方法についてわかりやすく解説します。

1.相続税の2割加算とは?

相続税の2割加算とはわかりやすく言うと、その名のとおり「特定の親族以外の人が財産を相続したら相続税額を2割加算する」という制度です。

ここで言う、特定の親族とは「配偶者・父母・子」のことです。

つまり、それ以外の人が財産を相続すると2割加算に該当することになります。

しかし、「なぜ亡くなった人との関係性によって相続税が増えるのか」と疑問に感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

2割加算は、相続税の公平性を保つために必要なルールだと考えられています。

一般的には、財産は親から子に、子から孫に引き継がれていきます。しかし、親から孫に財産が移転してしまうと子の世代の相続税の課税をスキップすることになり、一般的なケースより全体的な相続税の負担が少なくなってしまいます。このような場合に、2割加算を行うことで相続税の負担が公平になるように調整しているのです。

2.相続税の2割加算の対象になる人とならない人

相続税の2割加算は、亡くなった人の財産を相続した人が「配偶者・1親等の血族・代襲相続人の孫」以外の人である場合に適用されます。では、具体的にどのような関係性の場合に2割加算が適用になるのでしょうか。2割加算になる人の範囲についてわかりやすく解説します。

2-1.2割加算の対象になる人

・孫養子

一世代相続税の課税をスキップするため、孫養子は2割加算の対象になります。ただし、子の代襲相続人の場合は2割加算の対象になりません。

・兄弟姉妹

被相続人の2親等に該当するため、2割加算の対象になります。

・甥姪

被相続人の3親等に該当するため、甥姪は、2割加算の対象になります。

・子の配偶者

1親等の血族ではないため、2割加算の対象になります。ただし、子の配偶者が被相続人と養子縁組している場合には2割加算の対象にはなりません。

・内縁の妻

内縁の妻は配偶者に当たらないため、2割加算の対象になります。

・内縁の妻の子

被相続人が認知している場合は1親等の血族となり、2割加算の対象になりませんが、認知していない場合は2割加算の対象になります。

2-2.2割加算の対象にならない人

・配偶者、子、父母

1親等の血族のため、2割加算の対象になりません‘。

・孫以外の養子

1親等の血族に該当するため、2割加算の対象になりません。ただし、孫を養子にした場合は2割加算の対象になります。

・代襲相続人の孫

代襲相続人とは、親が亡くなっているため代わりに相続人になることです。代襲相続人の孫とは、親が既に亡くなっており、その後に祖父母が亡くなった場合、親の代わりに孫が祖父母の相続人になることを言います。

孫は2割加算の対象ですが、孫が代襲相続人である場合は2割加算の対象になりません。

2-3.孫へ相続時精算課税を利用した贈与を行った場合

2,500万円まで贈与税を負担せずに贈与することができ、相続発生時に贈与された財産を相続財産に加えて申告を行う「相続時精算課税」という制度があります。

孫が相続時精算課税を利用し、祖父母が贈与を行った場合、相続税申告時に2割加算になりますので注意しましょう。

ただしこの時も、孫が代襲相続人であった場合は2割加算の対象にはなりません。

2-4.死亡保険金に注意!相続放棄を行った場合の2割加算

通常、相続放棄を行うと財産を相続することはないため、相続税が発生せず、2割加算は関係ありません。しかし、代襲相続人の孫が相続放棄を行った場合で、死亡保険金を受け取った場合には2割加算の対象になることがあります。

死亡保険金は「みなし相続財産」となるため、相続放棄している人でも受け取ることが可能です。

そのため相続税が発生することもあります。

相続放棄した人が配偶者・1親等の血族であれば2割加算の対象にはなりませんが、代襲相続人の孫が相続放棄を行った場合については2割加算が適用されるので注意をしましょう。

3.孫を養子にする場合の注意点

孫を養子にする場合、2割加算の対象になります。孫を養子にする際は「2割加算されてでも財産を相続させた方がいいのか」「2割加算されてでも相続させた方がいい財産は何か」をしっかりと検討しましょう。例えば、将来的に財産の価値が跳ね上がると分かっているようなものがあれば、2割加算されてでも孫に相続させた方がいい場合もあります。

また、孫を養子にすると相続税の基礎控除や死亡保険金の非課税枠、死亡退職金の非課税枠が大きくなるため節税効果があります。

ただし、養子の数は実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までしか相続税の計算上、法定相続人の数に含めることができませんので注意しましょう。

4.相続税の2割加算の計算方法

相続税の2割加算は、基本的に相続税額を1.2倍する方法で求めます。2割加算がある場合の相続税の計算方法を具体例とともにわかりやすく解説します。

4-1.前提条件

  • 相続人は子と孫(養子縁組)
  • 相続財産である正味の遺産額は8,000万円
  • 子が5,000万円、孫養子が3,000万円の遺産を相続

4-2.計算方法

・課税遺産総額の計算

課税遺産総額は正味の遺産額から基礎控除を差し引いて計算します。

  • 正味の遺産額8,000万円-(基礎控除3,000万円+600万円×相続人2人)=課税遺産総額3,800万円

・相続税総額の計算

法定相続分で相続したとみなして相続税総額を計算します。孫養子は子と同様に取り扱いますので、法定相続分は1/2ずつとなります。

  • 課税遺産総額3,800万円×法定相続分1/2=1,900万円
  • 1,900万円×税率15%-控除額50万円=235万円(1人分)
  • 235万円×2人分=470万円

・各人の相続税の計算

相続税総額を実際の相続財産の価額で按分します。

  • 子 470万円×実際の相続財産5,000万円÷正味遺産額8,000万円=293万7,500円
  • 孫 470万円×実際の相続財産3,000万円÷正味遺産額8,000万円=176万2,500円

・2割加算の計算

孫の2割加算を計算します。

  • 孫 176万2,500万円×1.2=211万5,000円

5.2割加算を失念して申告した場合

2割加算を失念し、加算せずに申告した場合、税務署に指摘されて修正申告を行うと「過少申告加算税」の対象になります。

相続税申告書は、戸籍謄本を添付して税務署に提出しますので、税務署では「誰に2割加算が必要なのか」簡単に把握することが可能です。

過少申告加算税のほか、延滞税などのペナルティが課されてしまうおそれがありますので、注意して申告しましょう。

6.まとめ

今回は相続税の2割加算について解説しました。

相続税と贈与税などについては、法律の専門家にご相談ください。

当事務所でも、税理士・弁護士・社労士・司法書士・不動産鑑定士・FP等と連携し、一つの窓口で相続に関する全てをサポートさせて頂いております。お気軽にご相談ください。