コラム
公開日:2023/11/22
更新日:2024/03/18
車の相続税はいくら?かからない?評価額の計算方法とは
相続税申告では、亡くなった方の全財産の相続税評価額をもとに相続税額の計算を行います。もちらん、全財産の中には「自動車」も含まれるため、自動車の相続税評価額の計算が必要になります。
自動車は、相続税法上「一般動産」として取り扱われ、新車価格ではなく、亡くなった日の価値を算出する必要があり、評価方法も複雑です。
ここでは、自動車の相続税評価額の計算方法、いくらなのか、相続税はかかるのか、かからないのか、時価が100万円以下の場合の注意点についてご紹介します。
1.車を相続しても相続税はかかる!
まず初めに、亡くなった方の所有している自動車は相続財産に含まれ、相続税の課税対象になります。相続税法上は「一般動産」として取り扱われ、一般動産の評価においては5万円を超えるものについては1つ1つ評価を行わなければならないとされています。
1-1.車の相続では所有者の確認が第一
亡くなった被相続人が自動車の所有者ではない場合、自動車ローンが残っている可能性があります。自動車ローンの残債は、マイナスの財産として相続財産から差し引くことができますので、必ずチェックしましょう。
自動車の所有者は、車検証(自動車検査証)で確認することができます。
車検証の名義が亡くなった被相続人の名義の場合は「一括で自動車を購入した」「銀行ローンで購入した」または「カーローンを完済し所有権留保の解除を行っている」というケースがあります。
被相続人が名義人になっている場合は、相続人へ名義変更することが可能です。
1-2.所有者が違う場合には残債の確認を
車検証が被相続人ではなく、カーローン会社や自動車のディーラー名義になっている場合は「ローンが完済できていない可能性」があります。
ローンが完済できていなければ相続人がローンを引き継ぐことになります。
2.車の相続税はいくら?評価額の計算方法
自動車の相続税評価額の計算は「一般動産の評価(財産基本通達129)」に基づいて行います。「売買実例価格」や「精通者意見価格」などにより評価を行うことが一般的です。
2-1.売買実例価格
売買実例価格とは、一般的な中古車市場で売買されている価格のことを言います。対象となる自動車のメーカーや車種、年式、走行距離などを調べ、その情報と同じような自動車の買取り価格を調べれば売買実例価格を割り出すことができます。
流通の多い、一般的な自動車であれば売買実例価格を用いて相続税評価額を割り出すことができますが、流通の少ない高級車やプレミアのついた自動車などは売買実例価格を調査することは簡単ではありません。
このような場合には、以下の「精通者意見価格」を参考にします。
2-2.精通者意見価格
精通者意見価格とは、中古車を取り扱う業者やディーラーによる査定や鑑定により割り出された価格のことをいいます。
親族や知り合いなどに安い価格で売却し、その売却価格を相続税評価額にすることはできません。
2-3.査定でも価格がわからない場合
売買実例価格や精通者意見価格などの基準を用いることが難しい場合は「減価償却による評価」が特例的に認められています。
自動車のように継続的に使用されるものは、時の経過とともに資産価値が減少します。その資産価値の減少を減価償却として計算し、新品の状態の価値から減価償却を差引いた金額が「減価償却による評価額」になります。
2-3-1.軽自動車と自動車に違い|耐用年数と償却率
自動車の耐用年数は「普通自動車6年」「軽自動車4年」になっています。自動車の減価償却は「定率法」です。定率法の償却率は次のとおりです。
耐用年数(年) | 平成24年4月1日以後取得 | ||
定率法の償却率 | 改定償却率 | 保証率 | |
4年 | 0.5 | 1 | 0.12499 |
6年 | 0.333 | 0.334 | 0.09911 |
中古車の場合は、新車登録してから経過している期間に応じて耐用年数を決定します。
<中古車の耐用年数>
・一部経過している場合
(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%・全部経過している場合
法定耐用年数:2年
2-3-2.減価償却による相続税評価額の計算方法
実際に減価償却を用いて自動車の相続税評価額を計算してみましょう。
<計算例>
・被相続人が400万円で購入した新車の普通車
・自動車を購入してから1年以内に相続が発生減価償却費の計算 4,000,000円×償却率0.333=1,332,000円
相続税評価額の計算 4,000,000円-減価償却費1,332,000円=2,668,000円
上記の計算より、自動車の相続税評価額はいくらかと言うと、266万8,000円になります。
減価償却による相続税評価額の計算方法は特例として認められてはいるものの、実務上の使用頻度はあまり高くはありません。
特段の問題がなければ「売買実例価格」により相続税評価額を算出した方がいいでしょう。
3.車の相続の注意点
自動車の相続では、相続する人への名義変更が必要になります。名義変更する場合には、次の点に注意しましょう。
3-1.所有者が被相続人であるか確認する
冒頭でも紹介したとおり、カーローンなどで自動車を購入し、返済が終わっていない場合には車検証の所有者がローン会社やディーラーになっています。この場合、相続人はローン会社やディーラーに債務者が亡くなった旨を伝え、残債の確認と返済方法の決定を行わなければなりません。
相続人が自動車を使用しない場合は、ローン会社等が車両を引き取って換価処分を行い、残債の返済に充当します。充当しても残債がある場合は、法定相続人に請求が行われます。
3-2.共有名義にする場合は注意
自動車の名義変更は、複数の相続人の共有名義で行うこともできます。
ただし、車検の手続きや売却の手続きの際に所有者全員の同意や押印など、手間がかかることになります。
自動車の相続はできるだけ単独での相続にした方がいいでしょう。
3-3.時価が100万円以下なら遺産分割協議書は必要ない
相続により自動車の名義変更を行う場合、相続人全員で誰が何を相続したかを決めた書面である「遺産分割協議書」の提出が必要になります。
ただし、査定額(時価)が100万円以下の場合は遺産分割協議書に代えて「遺産分割協議成立申立書」という簡易的な書類で手続きが可能です。
また、軽自動車の名義変更には、遺産分割協議書の提出は必要ありません。
3-4.保険の契約変更も忘れずに
自動車の名義変更を行った後は、自動車保険の契約変更も忘れずに行いましょう。速やかに保険の手続きを行わなければ、保険が使えない期間がでてきてしまい、支障をきたすおそれがあります。
4.車の相続税対策でできること
自動車の相続税評価額は、現金よりも低く評価されることになるため、相続税対策として利用されることもあります。手許に現金がある場合、自動車を購入することで評価額の差額分だけ財産を圧縮することが可能です。特に中古車を購入すると評価額が低くなりやすいため、相続税対策としては効果があります。
同じような手段として、不動産を購入することで財産の相続税評価額を圧縮する方法も節税対策としてよく利用される方法です。
自動車にしても不動産にしても、相続税対策として現金を物に代えることはリスクが生じるため、慎重に検討する必要があります。リスクを軽減するためにも、相続税対策は税理士へ相談しましょう。
5. まとめ
亡くなった方が所有していた車は相続財産になり、相続税の課税対象です。相続税評価額の計算には、減価償却による評価も認められていますが、特段の問題がない限り中古車買い取り店などで査定してもらう方がいいでしょう。
特にプレミアのついた高級車の場合は、減価償却による評価では「時価」の計算が十分ではありません。ディーラーなどで査定してもらい、適正な相続税評価額で相続税申告を行いましょう。
相続税と贈与税などについては、法律の専門家にご相談ください。
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