コラム
公開日:2023/03/30
更新日:2023/10/25

家族信託はどこに頼むべき?司法書士?行政書士?税理士?

老後の認知症対策や相続対策として、「家族信託」を利用する方が増えています。

しかし、家族信託についての制度や内容がわからない方も多いかもしれません。そのような場合は、専門家に手続きを依頼する必要があります。

家族信託を扱う専門家には、弁護士、司法書士、行政書士、税理士などがいますが、どの専門家に依頼するのが適切なのでしょうか。

専門家によって扱う分野が異なってきますので、それらを理解したうえで依頼することが大切です。

今回は、家族信託をどこに頼むのがよいか、相談窓口はどこか等についてわかりやすく解説します。

1. 家族信託とは

家族信託とは、将来、認知症などの疾患により自分自身で財産を管理できなくなった場合に、預貯金や不動産などの財産の管理や処分権限を家族などの信頼できる者に委託することができる制度です。

家族信託には、委託者、受託者、受益者の3者が関わります。

  • 委託者:財産を所有している人で、管理を委託する人
  • 受託者:委託者から財産の管理や処分を任される人
  • 受益者:信託財産から発生する利益を受け取る人

たとえば、自分自身を委託者と受益者、子供を受託者にすることで、認知症になった後でも受託者である子供が預貯金を引き出して生活費を確保することができます。

詳しい内容については、以下のページを参考にしてください。

家族信託のメリット・デメリット・必要性をわかりやすく解説

2. 家族信託はどこに頼むべき?

家族信託を依頼できる専門家には、弁護士、司法書士、行政書士、税理士がいます。どこに頼むべきか悩む方もいらっしゃることでしょう。各専門家には、以下のようなメリット・デメリットがありますので、それを踏まえてどの専門家に依頼するかを判断しましょう。

(1)弁護士

①メリット

弁護士は、家族信託に関して、運用に必要な法的手続きのアドバイスや、トラブルが起きた場合の解決策などを提供することができます。

他の専門家と比べ、家族信託に関する業務に制限がないため、広範囲にわたる問題に対応できるメリットがあります。

②デメリット

弁護士は、すべての法律業務を扱うことができる反面、他の専門家に依頼した場合に比べて費用が高額になるというデメリットがあります。

また、信託財産に不動産が含まれている場合や税務申告が必要になるケースでは、別途司法書士や税理士に依頼しなければならないケースもあります。

家族信託を専門に扱っている弁護士は少ないため、依頼できる弁護士を探す際に苦労するかもしれません。

(2)司法書士

①メリット

司法書士は、不動産登記や商業登記などの登記を中心とした法律事務を行う専門家です。信託財産に不動産が含まれている場合には、書類作成から信託登記までワンストップで行うことができるという点がメリットといえます。

また、最近では、家族信託を専門に扱う司法書士も増えてきていますので、弁護士に比べると相談先を探しやすいといえるでしょう。

②デメリット

司法書士は、基本的には紛争性のある事案を扱うことができません。

そのため、万が一、訴訟に発展してしまった場合には、司法書士では対応することができませんので、別途弁護士に依頼しなければなりません。

家族信託に関して紛争が生じる可能性がある場合は、その対応に専門的な知識やスキルを持つ弁護士に依頼することが望ましいと言えます。

(3)行政書士

①メリット

行政書士は、主に官公署に提出する申請書類の作成および提出を行う専門家です。

行政書士に依頼をすれば、家族信託に必要となる契約書の作成などを行ってもらうことができます。他の専門家に比べて、費用が安いというのが大きなメリットといえるでしょう。

②デメリット

行政書士の業務は、主に書類の作成や提出などの手続きが中心となります。そのため、紛争性のある家族信託の問題や、不動産登記手続きなどは扱うことができません。

対応できる範囲が狭いというのが行政書士のデメリットといえます。

(4)税理士

①メリット

税理士は、税務署類の作成、税務相談、税務申告の代理などを行う税金の専門家です。家族信託は、相続対策としても利用される制度ですので、相続税や贈与税などの税金面からの検討も必要になります。

したがって、税金面の負担を抑えながら家族信託を利用したいという場合には、税理士に相談してアドバイスを受けるとよいでしょう。

②デメリット

税理士は、家族信託の税務面には対応できますが、法務面での対応は難しい場合があります。

家族信託に関する紛争解決などの法的手続きが必要な場合は、弁護士とタイアップで包括的に相談することが適切でしょう。

3. 家族信託の専門家を選ぶ際のポイント

家族信託の専門家を選ぶ際には、以下のポイントを踏まえて検討しましょう。

(1)家族信託の知識や実績がある

家族信託は、比較的新しい制度ですので、専門家であれば誰でも家族信託を依頼できるというわけではありません。適切な制度設計を行うためには、家族信託に関する知識や経験が不可欠になります。

そのため、専門家への相談時に取り扱い実績を尋ねてみたり、ホームページなどで家族信託の取り扱い実績を公表している事務所などを選択するのが安心です。

(2)提携する専門家がいる

家族信託では、法務、登記、税務など各分野の専門家の協力が必要になるケースがあります。別々の専門家に依頼しなければならなくなれば、説明や手続きなどの手間が生じてしまいますので、依頼者としては大きな負担となります。

各専門家と提携している事務所であれば、その専門家を窓口として各専門家に依頼をすることができます。そのため、出来るかぎりワンストップサービスを提供している事務所を選択するとよいでしょう。

(3)契約後のアフターフォローができる

家族信託契約を締結したらそれで終了というわけではありません。家族信託契約の見直しが必要になった場合には、内容の変更をする必要がありますし、当事者が死亡した場合には、相続手続きも発生します。

家族信託を依頼する場合には、このような契約後の諸手続きについてもフォローしてくれる専門家の方が安心といえるでしょう。

4.  まとめ

家族信託契約は、当事者だけで行うのが難しい契約ですので専門家のサポートが必要になってきます。

家族信託を扱うことができる専門家には、弁護士、司法書士、行政書士、税理士がいて、どこに頼むべきか悩む方もいるでしょう。それぞれ得意とする分野が異なりますので、ご自身の状況に応じた最適な専門家に依頼することが大切です。

家族信託を専門家に依頼する場合には、今回ご紹介したポイントを踏まえて探してみるとよいでしょう。

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