コラム
公開日:2024/07/02
更新日:2024/07/02
法定相続人・相続分とは|順位と割合、範囲はどこまで?わかりやすく解説
被相続人が亡くなり遺産分割をする際には、民法で定められている「法定相続分」が一定の基準になります。
法定相続分は誰が相続人になるかによって変わってきますので、適正な遺産分割を実現するためには、法定相続人の範囲や法定相続分の割合に関する基本的な知識を身につけておくことが大切です。
今回は、法定相続人や法定相続分などの遺産相続に関する基本事項、順位や割合、法定相続人と相続人の違いなどをわかりやすく解説します。
1. 法定相続人とは
まずは「法定相続人」の基礎について解説します。以下では、法定相続人の範囲と順位について説明します。
(1)法定相続人とは
法定相続人とは、民法により定められた遺産を相続できる権利を有する人のことをいいます。
被相続人の遺産は、家族であれば誰でも相続できるわけではなく、法律上、相続権が認められている法定相続人が相続することになります。
①「法定相続人」と「推定相続人」の違い
「推定相続人」では、現時点で遺産を相続できる権利を有すると推定される人のことをいいます。
推定相続人は、まだ相続が発生していない時点で誰が相続人になり得るのかを判断する際の用語になります。
一方で「法定相続人」は実際に相続が発生した後に誰が相続人になるのかを判断する際の用語という違いがあります。
②「法定相続人」と「相続人」の違い
また「相続人」とは、被相続人の遺産を実際に相続した人のことをいいます。
被相続人の遺産は、基本的には「法定相続人」が相続することになりますが、遺産分割協議や相続放棄などにより、法定相続人と実際に遺産を相続する相続人が一致しないこともあります。
(2)法定相続人の範囲と順位
被相続人が亡くなったときに誰が遺産を相続できるのかについては、民法で具体的に定められています。そのため、相続が発生したときは、民法が定める法定相続人の範囲および順位に従って、法定相続人を確定していくことになります。
具体的な法定相続人の範囲と順位は、以下のようになります。
- 第1順位の法定相続人……被相続人の子ども(子どもがすでに亡くなっているときは孫)
- 第2順位の法定相続人……被相続人の父母(父母がすでに亡くなっているときは祖父母)
- 第3順位の法定相続人……被相続人の兄弟姉妹(兄弟姉妹がすでに亡くなっているときは甥姪)
- 被相続人の配偶者は常に相続人になる
法定相続人には、上記のような順位が定められています。
自分よりも順位の高い相続人がいる場合には、遺産を相続することはできません。たとえば、被相続人の父母は、被相続人の子どもがいない場合でなければ遺産を相続することはできません。
2. 法定相続人の法定相続分
被相続人の遺産は、誰がどのような割合で相続できるのでしょうか。以下では、法定相続人の「法定相続分」について説明します。
(1)法定相続分の割合について
法定相続分とは、民法が定める遺産相続の目安となる相続割合です。法定相続分の割合は、誰が相続人になるかによって、以下の表のように変わってきます。
法定相続人 | 法定相続分 | 備考 |
配偶者のみ
子どものみ 父母のみ 兄弟姉妹のみ |
1/1 | 子ども、父母、兄弟姉妹が複数いる場合には、人数に応じて均等に按分する |
配偶者と子ども | 配偶者……1/2
子ども……1/2 |
子どもが複数いる場合には、子どもの法定相続分を人数に応じて均等に按分する |
配偶者と父母 | 配偶者……2/3
父母……1/3 |
父母がどちらも健在の場合には、それぞれの法定相続分は6分の1となる |
配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者……3/4
兄弟姉妹……1/4 |
兄弟姉妹が複数いる場合には、兄弟姉妹の法定相続分を人数に応じて均等に按分する |
(2)法定相続分によって遺産分割が行われないケース
法定相続分は、遺産分割における目安となる割合ですが、以下のようなケースでは、法定相続分どおりに遺産分割がなされないこともあります。
①遺言書がある
被相続人が遺言書を作成していた場合、基本的には遺言書に従って遺産をわけることになります。遺言により法定相続分以外の相続割合を指定することも可能ですので、遺言書の内容によっては、法定相続分とは異なる遺産分割になる可能性もあります。
②遺産分割協議で相続人全員の合意がある
法定相続人による遺産分割協議では、法定相続分が分割割合の一応の目安になりますが、法定相続分以外の割合で遺産分割することが禁止されているわけではありません。
そのため、相続人全員の合意がある場合には、法定相続分とは異なる割合での遺産分割を行うことも可能です。
③特別受益がある
被相続人から生前に多額の贈与を受けている相続人がいる場合、遺産の前渡しとして評価できますので、法定相続分どおりの遺産分割では不公平な結果になってしまいます。
そこで、民法では「特別受益の持ち戻し」という制度を設け、生前贈与などを受けた相続人がいる場合、特別受益を考慮して相続分を算定することとされています。
特別受益の持ち戻しが認められると、特別受益を受けた相続人は、本来の法定相続分よりも少ない割合になるため、法定相続分によらない遺産分割となります。
④寄与分がある
「寄与分」とは、被相続人の財産の維持・増加に貢献した相続人がいる場合、他の相続人よりも多くの遺産を分けてもらえる制度です。
寄与分は、被相続人の介護を献身的に続けていたなど、特別な寄与をした相続人に認められます。
寄与分が認められた場合には、法定相続分とは異なる内容の遺産分割となります。
3. 法定相続分の計算方法の例
以下では、被相続人の遺産が6000万円だったとして、具体的な法定相続分の計算方法をみていきましょう
(1)法定相続人が配偶者と子ども2人だった場合
法定相続人が配偶者と子ども2人だった場合、各人の法定相続分は、以下のようになります。
- 配偶者……1/2
- 子どもA……1/4
- 子どもB……1/4
上記の法定相続分に応じて遺産を分けるとします。各相続人が遺産分割で相続する財産を計算すると、以下のようになります。
- 配偶者……6000万円×1/2=3000万円
- 子どもA……6000万円×1/4=1500万円
- 子どもB……6000万円×1/4=1500万円
(2)法定相続人が配偶者と弟・妹だった場合
法定相続人が配偶者と弟・妹だった場合、各人の法定相続分は、以下のようになります。
- 配偶者……3/4
- 弟……1/8
- 妹……1/8
上記の法定相続分に応じて遺産を分けるとします。各相続人が遺産分割で相続する財産を計算すると、以下のようになります。
- 配偶者……6000万円×3/4=4500万円
- 弟……6000万円×1/8=750万円
- 妹……6000万円×1/8=750万円
4. まとめ
法定相続人の順位や範囲、法定相続分の計算は、遺産相続の基本となりますので、これらをしっかりと理解することが遺産分割の第一歩となります。
しかし、実際には、これらの知識だけでは対応できない事案も多く存在しますので、自分たちだけでは対応が難しいと感じたら、早めに専門家に相談することをおすすめします。
特に、相続税と贈与税などについては、法律の専門家にご相談ください。
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