コラム
公開日:2022/04/28
更新日:2022/04/28
代襲相続とは|範囲はどこまで?相続割合・順位などを解説
相続とは、財産などが代々受け継がれていくことです。親から子へ、子から孫へ受け継がれていくものですが、不運にも親よりも先に子が亡くなってしまうケースがあります。このような場合に「代襲相続」が発生し、一般の相続とは取り扱いが異なります。ここでは、代襲相続が発生した場合の相続人の範囲はどこまでなのか、相続割合、相続順位についてご紹介します。
目次
1.代襲相続が発生する状況とは?
1-1.代襲相続の基本|孫のケース
代襲相続とは「亡くなった相続人の権利をその相続人の相続人が引き継ぐこと」を言います。
例をあげると、先に亡くなった子に代わって孫が親の財産を相続することです。
<代襲相続(孫)の例>
代襲相続では、相続発生前に亡くなっている相続人を「被代襲者(上記の例では子)」、被代襲者の代わりに相続人になる人を「代襲相続人(上記の例では孫)」と言います。
1-2.兄弟姉妹・甥姪も代襲相続が認められる
代襲相続は、先ほどの例のように子が先に亡くなって孫が代襲相続人になるケースが最も多いです。
しかし代襲相続の範囲に含まれるのは、兄弟姉妹や甥や姪のケースもあります。
例えば、甥や姪が被相続人になるケースは、以下の場合に発生します。
- 亡くなった人に子がいない
- 亡くなった人の両親・祖父母も既に亡くなっている
- 亡くなった人の兄弟姉妹も亡くなっている
言葉にするとわかりにくいので、図に表すと次のとおりです。
<代襲相続(甥・姪)の例>
1-3.祖父母の代襲相続?
代襲相続と勘違いしやすい相続に祖父母が相続人になるケースがあります。例えば、下記の場合「祖父母が相続人」になります。
- 亡くなった人に子がいない
- 亡くなった人の両親は既に他界している
- 亡くなった人の祖父母は存命
この相続では、一見すると両親の代わりに祖父母が相続人の範囲に含まれ「代襲相続では?」と考えてしまいます。
しかし、民法では、祖父母の相続順位は両親と同じ第二順位(父母がいない場合に祖父母が第二順位)になるため代襲相続には該当しません。
2.養子縁組がある場合の代襲相続はどうなる?
亡くなった人(以下の図の場合、被相続人:父)が生前に養子縁組を行っている場合の相続人の範囲を考えてみましょう。
被代襲者が養子であった場合はその養子の子(被相続人の孫)が生まれた時期によって判断することになります。
ここで重要になることは「養子縁組が行われた時期」です。
養子縁組を行う前に養子の子が生まれている場合は、代襲相続することができません。一方、養子縁組後に生まれた養子の子は代襲相続することが認められています。
<養子がいる場合の代襲相続の例>
3.代襲相続が発生する場合の相続順位と相続割合
3-1. 相続順位の基本
相続人は民法によって決められております。
被相続人の「配偶者」は常に相続人になりますが、それ以外の相続人には相続順位があります。
問えば、第一順位が被相続人の「子」、第二順位が被相続人の「両親」、第三順位が被相続人の「兄弟姉妹」となります。
上の順位の相続人がいる場合には、下の順位の親族は相続人になることはできません。例えば、被相続人に配偶者と子がいる場合は、被相続人の両親と兄弟姉妹は相続人になることはできません。
一方で、被相続人に配偶者はいるけど子がいない場合は、配偶者と「第二順位である両親」が相続人になります。
3-2. 代襲相続の相続順位の基本
しかし、代襲相続が発生すると、相続順位が変更になります。
例えば、被相続人に配偶者と子がおり、相続発生前に既に子が亡くなっている場合を考えてみましょう。この場合の相続人は、配偶者と第二順位(第二順位がいない場合は第三順位)の親族になります。つまり、相続人は配偶者と両親(または兄弟姉妹)です。
この相続で、亡くなった子に子(被相続人から見ると孫)がいる場合はどうでしょうか。この場合は子の子(孫)が代襲相続人となり、子の相続順位(第一順位)を引き継ぎます。すると第二順位(または第三順位)の親族は相続人になることはできなくなります。
<孫2人が代襲相続する場合の例>
3-3. 代襲相続の相続割合
また、民法で決められている相続割合も同様に上手の通り、被代襲者から引き継ぎます。
ただし、代襲相続人が複数いる場合(孫が2人いる場合など)は、代襲相続人の数で均等に分けることになります。
3-4.二重相続資格者(孫養子の場合)の相続割合に注意
孫を養子にする「孫養子」を行っている場合で代襲相続が発生すると、孫が「二重相続資格者」になる可能性があります。二重相続資格者とは、1人で2人分の相続資格がある相続人のことを言い、二重相続資格者の相続割合は2人分の相続割合になります。しかし、相続人の数では、2人ではなく1人として数えられますので注意が必要です。
<二重相続資格者の相続割合の例>
上記の例では、被相続人が孫と養子縁組を行っており、さらに長男の死亡により孫が代襲相続人になった場合の相続割合です。養子としての相続割合1/8と代襲相続人としての相続割合1/8を足して1/4が孫の相続割合になります。相続人の数は二重相続資格者であっても1人として数えますので、上記の例の相続人は3人となります。
4.代襲相続は一代限り?代襲相続の範囲はどこまで?
滅多にないケースになりますが、代襲相続には「再代襲相続」というものがあります。
再代襲相続とは、孫が被相続人より先に亡くなり、孫の子(ひ孫)が代襲相続人になることを言います。代襲相続は一代限りのものではなく、子・孫・ひ孫・玄孫などの直系卑属であれば理屈的にはどこまでも代襲相続することができるのです。
ただし、代襲相続を何代にもわたって行うことができる親族は直系卑属だけです。第二順位の兄弟姉妹が亡くなっており、甥姪も既に亡くなっている場合は甥姪の子が代襲相続人になることはできません。兄弟姉妹の場合の代襲相続は甥姪で終わりになり、その後の世代に続かない点が直系卑属の代襲相続と異なります。
5.代襲相続が発生する可能性がある場合の遺言書の注意点
「自宅は長男Aに相続させる」という遺言書を遺した場合に、長男Aが被相続人より先に亡くなる可能性がある場合には注意が必要です。代襲相続という観点から考えると長男Aの子が代わりに自宅を相続できると考えてしまいますが、遺言の効果が発生する相続発生日(死亡日)において長男Aは既に亡くなっているため、遺言書自体の効力が「原則的に無効」になってしまいます。(最判平成23年2月22日民集65巻2号699頁)
遺言書で代襲相続を行いたい場合には「自宅は長男Aに相続させる。ただし、長男Aが既に亡くなっている場合は長男Aの子Bに相続させる」という風に予備的な遺言にすることで対応することが可能です。相続人が長期療養中である時に遺言を遺す場合には気を付けましょう。
5-1.遺留分には注意が必要
代襲相続が発生すると、直系卑属の代襲相続人には被代襲者と同じ遺留分(最低限留保されている遺産の取り分)が発生します。代襲相続人の遺留分のことを考慮せずに遺言書を作成すると、後々トラブルに発展してしまう可能性が高くなりますので、遺留分も考慮して遺言書を作成するといいでしょう。
ただし、直系卑属ではない兄弟姉妹の子(甥姪)が代襲相続するケースでは、甥姪に遺留分は発生しません。遺言書に「甥姪には相続させない」と記載することで、甥姪が財産を相続することができなくなり、遺留分も主張することができなくなります。甥姪へ財産を相続させたくない場合には遺言書が有効です。
6.まとめ
代襲相続が発生すると相続人の関係・範囲や相続分が複雑になり、トラブルに発展するケースも少なくありません。特に、相続人が多いケースではなかなか遺産分割協議がまとまらないこともあります。事前に代襲相続の仕組みや相続分を把握し、遺言書作成などの対応を検討することをおすすめします。