コラム
公開日:2021/01/29
更新日:2021/02/22
小規模宅地等の特例の計算例・ポイント等をわかりやすく解説
小規模宅地等の特例とは、相続税における不動産関係で一番重要度の高い特例です。
一定の要件を満たすと土地の相続税評価額が「最大80%減額」できるため、この特例を知っている人と知らない人とでは相続税額に大きな違いが出てきます。
ここでは、小規模宅地の特例について具体例とともにわかりやすく解説します。
なお、下記の相続と土地に関連するコラムも併せてご参照ください。
【参考コラム】
目次
1.小規模宅地等の特例とは|わかりやすく解説
小規模宅地等の特例は、亡くなった方の自宅の土地や事業を行っている土地について、条件を満たした親族が相続することで「相続税評価額を最大で8割引」してくれる制度のことです。
ただし、適用要件が複雑なため、相続が発生する前に適用要件を満たしているかどうかしっかり確認する必要があります。
小規模宅地等の特例の対象になる土地は、下記の3種類です。
- 自宅のあった土地(特定居住用宅地等)
- 事業をしていた土地(特定事業用宅地等または特定同族会社事業用宅地等)
- 貸していた土地(貸付事業用宅地等)
また、それぞれ限度面積、減額割合は以下の通りになります。
特定居住用宅地等 | 特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等 | 貸付事業用宅地等 | |
限度面積 | 330㎡ | 400㎡ | 200㎡ |
減額割合 | 80% | 80% | 50% |
以下、それぞれ詳しく解説して参ります。
2.自宅のあった土地(特定居住用宅地等)の場合
自宅のあった土地(特定居住用宅地等)で小規模宅地等の特例を受けるためには、まず対象の土地が次のどちらに当てはまるか確認しましょう。
- A.亡くなった人が住んでいた場合
- B.亡くなった人が保有する物件に、生計を一にする親族が住んでいた場合
2-1. Aに該当する場合の要件
Aの場合、次の条件に該当する人が、土地を相続する際に、小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。
- ①亡くなった人の配偶者
- ②亡くなった人と同居していた親族(*ただし、相続税申告期限まで対象の土地を所有し、居住を継続している人が対象)
- ③亡くなった人と同居していないが、次の要件にすべて該当する親族
- 1.相続税申告期限まで対象の土地を所有している
- 2.亡くなった人に配偶者・同居している相続人がいない
- 3.相続発生前3年間に自己や亡くなった人、その配偶者などが所有する物件に居住したことがない人(家なき子)
2-2. Bに該当する場合の要件
Bの場合、次の条件に該当する人が、土地を相続する際に、小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。
- ①亡くなった人の配偶者
- ②亡くなった人と生計を一にしていた親族(ただし、相続税申告期限まで対象の土地を所有し、居住を継続している場合が対象)
2-3.具体的な計算例
それでは、特定居住用宅地等に該当し、小規模宅地等の特例の適用を受けられる場合には、どのくらいの土地の相続税評価額を減額できるのか、具体例とともに見ていきましょう。
具体例①:相続税評価額8,000万円(300㎡)の居住用宅地
特定居住用宅地等では特例が受けられる限度面積が330㎡であるため、この宅地(300㎡)全体について小規模宅地等の特例の対象になります。
1.評価減の計算
8,000万円×減額割合8割=6,400万円
2.土地の評価額
8,000万円-6,400万円=1,600万円
つまり、この場合、小規模宅地等の特例の適用により「6,400万円も土地の評価額を減額」することができ、評価額を基礎に計算する相続税額を大きく減額することができることが分かります。
具体例②:相続税評価額1億2,000万円(600㎡)の居住用宅地
一方、限度面積の330㎡を超えている場合については、次の算式により評価減の計算を行います。
1.評価減の計算
1億2,000万円×330㎡/600㎡×8割=5,280万円
2.土地の評価額
1億2,000万円-5,280万円=6,720万円
限度面積を超える場合には、330㎡までの部分について8割の減額を行います。
3.事業をしていた土地(特定事業用宅地等)の場合
亡くなった人やその人と生計を一にする親族が「事業を行っていた土地」について、一定の要件を満たすことで小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。
たとえば、事務所や工場、倉庫などに利用している土地が対象になります。
特定事業用宅地等に該当する土地は、次の2つの要件を満たすことで小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。
- ①事業継続要件(相続税申告期限まで引き続いて事業を営んでいること)
- ②保有要件(相続税申告期限まで対象の土地を保有していること)
3-1.具体的な計算例
具体例として、1億5,000万円(800㎡)の事務所用土地を考えてみましょう。特定事業用宅地等の限度面積は400㎡、減額割合は8割なので、下記のような計算になります。
1.評価減の計算
1億5,000万円×400㎡/800㎡×8割=6,000万円
2.土地の評価額
1億5,000万円-6,000万円=9,000万円
また、同族会社の事業用土地(特定同族会社事業用宅地等)についても、特定事業用宅地等と同じように計算を行います。
3-2.注意点
注意点として、事業で使用している土地であっても「賃貸アパート」や「貸駐車場の土地」については特定事業用宅地等に該当せず、後ほどご紹介する「貸付事業用宅地等」に該当します。
また、資材置き場などに利用している土地で舗装工事などの構築物がない場合は、小規模宅地等の特例の対象にならないため注意が必要です。
4.貸していた土地(貸付事業用宅地等)の場合
「賃貸アパート」や「駐車場として貸し付け」を行っていた場合は、貸付事業用宅地等として小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。
適用要件については、特定事業用宅地等と同じく、2つの要件(事業継続要件と保有要件)を満たすことで小規模宅地等の特例の適用を受けることができます
4-1.具体的な計算例
具体例として、9,000万円(400㎡)の事務所用土地を考えてみましょう。
貸付事業用宅地等の限度面積は200㎡、減額割合は「5割」となり、他の宅地よりも評価額の減額効果は少なくなります。
1. 評価減の計算
9,000万円×200㎡/400㎡×5割=2,250万円
2. 土地の評価額
9,000万円-2,250万円=6,750万円
4-2.注意点
適用を受けるためには、実際に相当の対価で貸し付けている必要があり、親族などに無料や低価で貸し付けている場合などは、その部分に対応する土地について「適用対象外」になりますので注意が必要です。
また、節税目的による貸付事業用宅地等の利用を回避するため相続開始日前3年に新たに貸付事業の用に供された宅地等は対象外になります(平成30年税制改正)
5.特定居住用宅地等に配偶者居住権が設定されている場合は?
令和2年より導入された「配偶者居住権」が自宅に設定されている場合について、土地部分の配偶者居住権が小規模宅地等の特例の対象になります。
配偶者居住権とは、亡くなった人の配偶者がそのまま自宅に居住できる権利です。
配偶者居住権は相続財産として評価され、「自宅の建物に対する配偶者居住権」と「敷地利用権」に区分されます。
このうち「敷地利用権」について小規模宅地等の特例を適用することができます。
6.まとめ:茨城県・つくば市の生前贈与・相続税対策は鯨井会計グループへ
今回は、「小規模宅地等の特例」についてご紹介しました。
小規模宅地等の特例は、相続税の節税対策として効果的であり、上手く利用することで大きく相続税額を減額することが可能です。
ただし、家族構成や現況などが適用要件となっているため、前もってしっかり事実関係を確認・検討することが必要になります。
相続税について不安に思うことや、自分で申告することが難しいと感じた時は、なるべく早く税理士に相談されることをおすすめします。
なお当事務所「鯨井会計」では、茨城県つくば市を中心として、相続対策の立案・実行支援サービスを実施しております。
相続税に関するセミナーも頻繁に行い、相続税に関するご依頼も数多くお受けしております。
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