コラム
公開日:2020/06/29
更新日:2024/10/28

自筆証書遺言の書き方・ポイント・注意点を解説

遺言書は、相続の準備をするうえで一番重要と言っても過言ではありません。

生前に遺言書を作成しておくことで、故人の遺志を相続人へ伝えることができ、相続人同士の遺産分割を円滑にすすめることができます。

ここでは、どのように自筆証書遺言書を作成すればよいのか、最新の法改正を含めてご紹介します。

1.遺言書の基礎知識

1-1.  自筆証書遺言書とは

「自筆証書遺言書」は、主に3種類ある「遺言書」の1つです。

遺言をする人(遺言者)が自筆することで成立する遺言書で、特別な手続きは必要ありません。利用しやすく、特別な費用もかからないため多くの人に利用されている遺言書の形式です。

自筆証書遺言書以外の遺言書の形式には、次の2つがあります。

公正証書遺言書

公証人が証人2人の立ち合いのもとで遺言者から遺言の内容を聞き、「公証人が作成する遺言書」のことです。

公証人が作成した公正証書遺言書は、公証役場で保管されます。

専門家が関与するため確実性が強いですが、遺言書の資産の価格によって公証役場の手数料がかかります。

秘密証書遺言書

この遺言書も公証人に依頼が必要になる遺言書です。

ただし、公正証書遺言書とは異なり、公証人は遺言書の存在を証明するのみであり「遺言書の作成は、遺言者が行う」ことになります。

誰にも遺言書の内容を知られたくない場合に有効な遺言書です。

1-2.生前に遺言書を書く必要性

そもそも、遺言書が必要な理由は「親族間の争いごとを防ぐため」です。

相続では、遺言書が法定相続分より優先されます。そのため、遺言書を残すことで親族は故人の遺志を確認することができ、財産を巡って争うことがなくなります。

特に、次にご紹介する状況の方は遺言書を残すことで親族間のトラブルを回避することができます。

子供のいない夫婦の相続ケース

子供のいない夫婦の相続の場合で、夫婦のどちらかが亡くなると法定相続人は配偶者だけとは限りません。

被相続人(亡くなった人)の両親が存命の場合は、「両親も法定相続人」になります。

また、被相続人の両親が既に亡くなっており、被相続人の兄弟がいる場合はその「兄弟が法定相続人」となるのです。

そのため、疎遠だった兄弟が相続権を主張するケースも多くあります。

この場合、「妻に全財産を相続させる」と遺言書を残すことで親族間のトラブルを回避することができます。

相続財産に不動産が多い場合

不動産は、物理的に分割することができません。

登記簿上では持ち分で相続することができますが、処分する場合などに親族間の争いが多く発生します。

遺言書により相続人が相続する不動産を指定することで親族間のトラブルを回避することができます。

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相続人がいない

相続人が既に他界しており、相続人がいない場合は、遺産は「すべて国」へ帰属されます。

遺産を相続させたい人がいる場合は、遺言書を残すことで身内ではなくても財産を相続させることができます。

その他の場合

また上記以外にも、次のような状況に遺言書は有効と言えるでしょう。

  • 親族以外に財産を残したい場合
  • 事業継承
  • 家族関係が複雑な場合

2.正しい遺言書の書き方・ポイント

自筆証書遺言書の作成には、正しく書く必要があります。このルールを間違ってしまうとせっかく残した遺言書が無効になってしまいます。以下ポイントを解説致します。

2-1.手書き・パソコン入力について

自筆証書遺言書を正しく書くには、文字通り自筆、つまり手書きである必要があります。

遺言書の一部分でも他人が代筆すると遺言書自体が無効になってしまいます。

ただし「遺言書に財産目録を添付する場合」の財産目録のみの作成についてはパソコン・ワープロで入力し印刷したものが認められています。

遺言書全体のパソコン入力が認められているのではなく「財産目録」のみパソコン入力が認められていますので注意しましょう。

2-2.財産目録を添付することについて

「財産目録」とは、遺産を分かりやすく一覧にしたものです。

決められた様式がなく自由な形式で作成してかまいません。

なお「遺言書を正しく書くためには、財産目録が必要になる」というわけでは必ずしもありません。

個別にどの財産を誰に相続させるか分かれば問題ないのですが、財産目録を用意することで相続人の「遺産分割手続きの負担を軽減」するメリットが有るということです

遺言者にとって自分の財産を把握することは難しいことではありませんが、残された家族にとって被相続人の全ての財産を把握することはとても困難で時間のかかる作業です。

遺言書に財産目録を付けることにより、残された家族が被相続人の遺産を正しく把握することが容易になります。

また、先述した通り2019年よりパソコンやワープロの入力により作成した財産目録について認められるようになったため、遺言書を財産目録に添付するハードルが下がっており、おすすめです。

2-3.日付、署名、押印を忘れずに

正しい遺言書を書くためには、日付、署名、押印の記載が重要で、法律でも定められています(民法第968条第1項)

これを忘れてしまうと「遺言書自体が無効」になってしまうので、忘れずにチェックを行いましょう。

日付については、「遺言書を作成した日」を記入します。「6月吉日」など日付が特定できない場合は遺言書が無効になります。

また署名は、本名で苗字・氏名を記入します。戸籍謄本どおりに自筆で署名を行いましょう。押印については、認印でも結構ですが、後々のトラブルを避ける点でも実印で押印することが望ましいでしょう。

3.分かりやすい遺言書の作成手順

ここまで自筆証書遺言書のルールを確認しました。次は具体的な遺言書の作成方法を見ていきましょう。次の手順通りに行うことで、見落としがなく自筆証書遺言書を作成することができます。

STEP1: 財産を確認する|必要書類のチェック

遺言者が保有している「財産を確認」することが遺言書を作る第一歩であり、一番重要なステップです。各財産の種類ごとに必要書類を確認していきましょう。

①不動産の確認

「登記簿謄本」「固定資産税評価証明書」「売買契約書」などの書類により、保有している不動産をチェックすることができます。

登記簿謄本は、法務局で発行可能です。

また、固定資産税評価証明書は市役所で発行申請することができます。

②有価証券の確認

「証券会社の残高証明書」が必要になります。

未上場株式の場合は、市場価格がないため株の評価を行わなければなりません。

この場合は、税理士への依頼が必要になります。

③預貯金の確認

「各銀行の残高証明書」または通帳が必要になります。

日頃使用していない通帳は、特に忘れがちですので漏れがないようにしましょう。

④生命保険関係の確認

「生命保険証書」「火災保険等の保険証書」で確認できます。

契約時に受け取っていますので準備しましょう。

⑤その他財産(ゴルフ会員権、電話加入権、自動車などの動産、未収入金などの債権)

その他の財産も同様で、購入時の資料や内容のわかる書類を準備しましょう。

STEP2:  財産目録を作成する|雛形・サンプルを確認

確認した財産をもとに財産目録を作成します。2020年現在は、先述のとおり、産目録のみパソコン入力で作成可能です。

通常、財産目録は「別紙」として自筆証書遺言書に添付します。

別紙として作成する場合は、下記の例のように財産の詳細を記載し、各ページの末尾に遺言者の署名と押印をします。

詳しくは下記法務省のサンプルページをご参考ください。

■別紙目録の雛形・サンプル(2ページ目)
http://www.moj.go.jp/content/001279213.pdf

STEP3: 財産を受け取る人を確認する

遺言書により財産を受け取る人(受遺者)の確認を行います。

受遺者は、親族などの法定相続人以外でもなることができます。

ただし、法定相続人以外の人が受遺者になる場合や、特定の法定相続人のみに多くの財産を残す場合は「遺留分の問題」が発生します。

この場合は、事前に法律の専門家に相談した方がいいでしょう。

STEP4: 誰にどの財産を相続させるか決める

遺言書に記載する財産と受遺者を確認した後は、誰にどの財産を残すかを決めます。

なお、財産目録に記載した財産以外の財産がある可能性があるため、遺言書には「ここに指定のない財産は全て****に渡す」と記載することで、親族間のトラブルを避けることができます。

STEP5: 簡単な見本・文例の内容を確認して作成する

準備が整ったら、実際に例文を見ながら、遺言書を記載していきます。

先述した、法務省のサイトのシンプルな見本を確認しながら記載してみるのが良いでしょう。

全財産の確認、誰に相続させるかが確認できていれば、簡単に記載することが可能です。

■遺言書本文見本・文例(1ページ目)

http://www.moj.go.jp/content/001279213.pdf

STEP6: 作成後は厳重に保管

遺言書の作成後は紛失しないように保管しなければなりません。

ただし、相続が発生後に遺言書の存在を見つけてもらわなければ意味がありませんので、金庫などの分かりやすい場所で保管するか、配偶者にだけ保管場所を伝えておくなどの手立てが必要です。

4.2020年7月に自筆証書遺言書保管制度が新しくスタート

遺言書の保管について、これまでは自宅で保管されていることが多くあり、たびたび紛失や盗難に遭うケースが見受けられました。また、遺言書があると不利になる相続人から遺言書の隠匿などが行われることもありました。

その結果、遺言書があるのにも関わらず親族間で相続トラブルに発展するおそれがあったため、法務局では「自筆証書遺言書保管制度」を2020年7月より新しくスタートします。

4-1.メリット:検認不要で遺言書の紛失や隠匿を防止

「自筆証書遺言書保管制度」により、法務局で遺言書を保管することができるようになることで、自筆証書遺言書のデメリットである「遺言書の紛失や隠匿、改ざんなどを防ぐ」ことができ、「安全に遺言書を保管」することができます。

また、今までの自筆証書遺言書に必要であった家庭裁判所の「検認手続きが不要」になります。

検認手続きには約1ヵ月の期間がかかっていたため、検認手続きを省略することで相続手続きを迅速に行うことができます。

4-2.手続場所と費用

「自筆証書遺言書保管制度」の申請は、次の地域を管轄する「法務局」で行われます。

  • ①遺言者の居住地
  • ②遺言者の本籍地
  • ③遺言者の所有している不動産の所在地

また、この制度を利用するためには、遺言書の保管申請1件につき3,900円、遺言書の閲覧(原本)1件につき1,700円必要になります。

手数料はかかりますが、公証人が作成する公正証書遺言書よりも安価なことがメリットです。

保管申請時に法務局職員より遺言書の形式を満たしているか確認もしてもらえますので、遺言書が無効になることも少なくなります。

5.遺言書次第で相続税が大きく変わる

遺言書を作る際に忘れがちなのが「相続税の負担がどれくらいになるか」です。

もしも相続税を考慮しない場合、例えば「不動産を相続した人」が現金不足のため、相続税が払えず相続した不動産を売却しなければならない場合もあります。

5-1.二次相続を考慮した遺言書作成を

相続税を考慮して遺言書を作成すると、どうしても配偶者が相続する財産が多くなります。

これは「配偶者の税額軽減制度」があるからです。

配偶者の税額軽減制度は、配偶者が相続した財産が1億6,000万円までは相続税が課税されない制度です。

この制度を利用して配偶者に多くの財産を残すことで一次相続の相続税を減額することが可能です。

しかし、配偶者に多くの財産を残した場合、その配偶者が亡くなった時(二次相続)の相続税が「非常に高額になる可能性」があります。

5-2.税理士に相談しよう

「二次相続まで見据えた遺言書の作成」と言いましたが、このような遺言書を作成するには専門家でなければ難しいことです。

特に、2020年4月に創設された「配偶者居住権制度」により二次相続までの相続税を試算することはさらに難しくなってきています。

配偶者自身が保有する資産や子の持ち家の状況など、多くの要素が二次相続には絡んでくることになります。

弁護士や司法書士も遺言書の専門家ですが、相続税の専門家ではありません。二次相続まで見据えた遺言書を作成するためには、相続税に強い税理士に相談することをおすすめします。

相続税に強い税理士を選ぶ際のポイントとタイミング

6. まとめ:茨城県・つくば・下妻周辺の生前贈与・相続税対策は鯨井会計グループへ

今回は自筆証書遺言の簡単で正しい書き方・ポイント・注意点を中心に、法律の改正点なども踏まえて解説してまいりました。

また、遺言書を書く際には、二次相続についても踏まえながら内容を検討したほうが無難でしょう。

なお当事務所「鯨井会計」では、茨城県つくば市を中心として、相続対策の立案・実行支援サービスを実施しております。

相続税に関するセミナーも頻繁に行い、相続税に関するご依頼も数多くお受けしております。

  • 葬儀後、何から手を付けて良いかわからない。
  • 預貯金の解約手続き、不動産の名義変更をどのように行ったらよいか分からない。
  • 相続税申告が必要かどうかわからない。
  • どの様な財産に対して税金がかかってくるのかわからない

等、少しでも相続について不安な方、最寄りにお住まいの方は、ぜひ当事務所にご依頼ください。

主な対応地域は、下記の通りです。

茨城県(つくば市・水戸市・土浦市・古河市・結城市・龍ヶ崎市・下妻市・常総市・笠間市・取手市・牛久市・ひたちなか市・鹿嶋市・潮来市・守谷市・那珂市・筑西市・坂東市・稲敷市・かすみがうら市・桜川市・神栖市・行方市・鉾田市・つくばみらい市・小美玉市・茨城町・大洗町・城里町・東海村・美浦村・阿見町・河内町・八千代町・五霞町・境町・利根町)、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県